メンタルヘルス不調者への対応は、最近、増加している労務管理上の大きな問題ですが、沖縄では特にこの問題は深刻です。沖縄に多く立地するコールセンターでは、全国からの苦情を引き受けているため、そこで働くスタッフのストレスは大変なものになります。また県外から沖縄に単身で赴任された方も、新しい職場環境や現地スタッフの気質に馴染むことができず、ストレスを抱え込んでしまうことがあります。
会社としてはこのような社員のメンタルリスクを経営上の大きなリスクとして捉え、正しい対策をとることが重要です。
もし社員が仕事のストレスで自殺してしまったら?
例えば、業務や職場内の人間関係で社員が精神疾患にかかり、自殺してしまったらどうなるでしょうか? 悪評等の社会的制裁を会社が受けることはもちろんですが、死亡した社員の遺族に訴えを起こされた場合、会社が負担すべき補償の相場は7000万円~1億円と言われています。 社員が自殺を図り、大きな障害を負ってしまったが生存しているケースでは、もっと大きな金銭的負担と社会的責任を将来にわたって会社が負うことになります。あなたの会社の経営は、この負担に耐えられますか?
「ウチは、派遣社員を使っているからそんなリスクは関係ない」という、経営者もいらっしゃるかもしれません。果たしてそうでしょうか? 職場で働くスタッフの安全を確保しなければならないという「安全配慮義務」は、確かに一義的には使用者(派遣社員の場合は派遣元)が負うことになっています。ただしこれは派遣先の経営者に責任がないという意味ではありません。現在、労働安全衛生法の整備が進んでいますが、職場の安全を確保する責任者としての「使用者」は広い意味で捉えられており、派遣や請負で人を雇って働かせている経営者にも及びます。
社員が精神疾患にかかって働けない場合、どうすれば良いのか?
精神疾患にかかったからといって、社員を簡単に解雇するわけにもいきません。もしそんなことをして訴訟でも起こされたりすれば、よほどの準備をしていない限り、多額の負担を会社が背負い込むことになるでしょう。裁判になれば、かかる費用も時間も莫大なものになります。しかし働けない社員をいつまでも在籍させておくのも問題です。社員への賃金や社会保険料等の金銭的負担は会社経営を圧迫しますし、他の社員に悪影響が及ぶことも懸念されます。
メンタルヘルス不調の社員を抱えてしまった場合、やはり会社として、何らかの対策をとらなければなりません。その精神疾患の原因が果たして仕事が原因なのか、プライベートなものなのかで、会社が取るべき対応も大きく変わってきます。メンタルヘルスの現場では、それぞれのケースの個別具体性に即した対応をとることが重要であるため、画一的なマニュアルに沿った対応には限界があります。メンタルヘルス対応の現場においては、問題の発生要因や背景、法的リスク等を的確に分析し、適切な助言をできる専門家の支援を受けることが、問題解決への一番の近道なのです。